「中学生・高校生の指導って難しそう。」「中高の学級運営ってどんな感じだろう?」と不安をおもちの方も多いのではないでしょうか?
中高の学級運営で大切なことはどんなことなのでしょうか?
今回は、教員からコーチングの仕事に転職したというMさんから、学級経営で大切にしていたことや、教員志望の方に伝えたいことを中心に、インタビュー形式でお話をお伺いしました。
※本記事は2021年2月5日に行われた教員0年目サークルzoom会の内容を基にしています。
本日のゲスト紹介
元私立中高一貫校教員Mさん
- 中高の英語を担当。英語は得意ではないことを売りとしていた!
- バレーボール部の指導を15年。
- 教員16年目に教師を退職。
- 現在は、キャリアコンサルタントの資格を有し、人事とコーチングの仕事を。
中学高校の学級運営で大事なこと
- コーチングを学んでから、生徒との関わりが大きく変わりました。
前は、すごく古いスタイルで関わっていた。怖い先生がいて、子どもたちは教師の顔色を見ながら生活をする。 特に1〜2年目はノリと勢い、怒るときは子どもたちが従うみたいな感じ。怖い先生をイメージして接していた。
Q:中高生は反抗心が強いイメージがある。そのため中学の先生は高圧的な指導が多いイメージだが、実際はどうですか?
高校(で勤務すること)が長かった。高校生は本当に大人と同じ。話をすると理解してくれるから押しつける必要はない。中学生は説明だけでは通じないところもあったが、理屈が通らない訳ではない。生徒との接触回数を増やすと信頼関係が築けてくる。教師が指導のために大声を出す必要はない。
Q:担任によって学級運営の違いは中高でもあるのですか?
担任の色が出るので大きく差が出る場合もある。年齢が低いほど適切な支援が行われているかどうかや、先生の関わり方で学級の雰囲気が変わる。
Q:クラスが荒むというのは?
A:例えば、教師の気を引こうとする態度が増えたり、まとまりがなくなってくるということがある。行事に対してまとまりがないクラスは楽しくなく、参加率が低い。担任の関わりによって変わる。
中学校はいろいろな先生が入るから担任の影響がないと思っていました!色が出るのですね。
Q:学級運営するに至って大事なことはなんだと思われますか?
「問いを投げること!」
生徒に問いかけて学級運営に子どもの思いを乗せていった。
例えば…
- 「いいクラスってどんなクラス?」←お飾りじゃない学級目標にするため、担任が勝手に決めずに生徒が考えられるように環境を整える。
- 「行事が終わった時にどんな感情を持っていたい?」
- 「みんなが行事に対してある程度満足するためにはどうしたらいい?」など問いかける
Q:目標を決める大切さを実感した具体的なエピソードはありますか?
実感したことは行事への参加率が上がったこと。教員主導であれこれやることだけを伝えると参加率が低い。目標があると、生徒の中で「今の自分たちで目標を達成できるだろうか」という視点が生まれ振り返りが促進される。生徒同士で協力しようとする空気が生まれる。
Q:全員が納得する1つの目標をつくるのは難しいと思うのですが?
多数決は最終手段だと考えている。そのためブレインストーミングでアイデア出して、削っていくという手法をメインにしていた。教員の立場から実現が難しいアイディアは伝えることもあった。
4月最初の頃は教師が主導で話し合いを進めるが、徐々に委員が中心に話し合いを進めるようにしていた。そうすることで、前に出てまとめることの大変さも経験してほしいと思っていた。
生徒たちはその経験によって、その後の話し合いでどんな意見を言うと話し合いが進むか理解ができるようになってくる。話し合いの時間は工夫して多めにとり、大切にしていた。
これから先生になる皆さんへ伝えたいこと
今、世の中からの教員に対するあたりが強いと感じています。働き方の見直しがされてきたものの、教員に求めるものが多いです。これは同時に、それだけ学校が期待されているということだと思います。
★先生が潰れないことが大事!
これまで見てきた潰れてしまう先生の特徴としては、特に…
- 抱え込んでしまう人
- 責任を背追い込んでしまう人
が多かったように感じています。
★潰れないためのアドバイス!
- 責任を感じすぎなくていい!多くの目で見ている一人の目が教師だと思う。
- 子どもには、「教師は完璧ではない。間違いもあるかもしれないし言葉遣いが違う時もあるかもしれないけど精一杯頑張るよ。」と日々伝えていました。
- 学校内外問わず、自分の話を言えたり誰かの話を聞けたりできる繋がりを持つことで健康を保つだけではなく、子どもたちに伝えられることがある。
- 自分で自分をリフレッシュできるようにして欲しいなと思います。
Q&A
Q:中高生と接するときに、優しさと厳しさをうまく使い分けるコツはありますか?
「自分は〇〇に対して厳しく指導するよ」と前もって提示していた。
その一つが、他人の不幸の上で自分の幸せを得ようとすることです。
(勤務していた)大阪では、いじめを「いじってるだけ」など笑いに変えて誤魔化すことがありました。その誤魔化した発言やいじっていた行動をしたことで人気者になれるのか、相手が幸せになれるのか話を聞いて理由と共に指導していました。
また、年度始めに厳しく指導する必要のあることは、各クラスで伝え、そのことが起きてしまった時(もしくは起こりそうな時)に繰り返し伝え続けることで、生徒にその大切さが定着するようにしていました。その軸が、ブレると舐められることがあるのだと思います。
Q:なめられてしまわないように工夫していることはなんですか?
自分は男性で運動部の顧問という厳しいイメージからか、舐められなかった。でも赴任して最初の頃は「僕の方が長く学校にいるから」とマウントを取ってくるような生徒もいた。
そのような時は「授業は自分のやり方でするよ」と伝えていました。また、例えば掃除の仕方で「うちの学校は細かくやらなくていいんです」など言う生徒がいました。そのような場合は、「学校がどうではなく、自分が必要だと思うからやって欲しい!」と伝えていました。
Q:生徒の目標を大事にする分、どこまで教師が介入するかは難しくないか?
「クラスは、教師も含めたコミュニティであるから、一人のメンバーとして意見を言わせて欲しい」と伝えていた。バランスを見ながら言わなければならないことは言っていた。
時には、「このメンバーこの雰囲気でこれくらいしかできないの?」や「もっと行けると思うんだけど、」などと発破をかけることもあった。
トラブルが起きた時には、「このクラスならトラブルをもっと小さく抑えられたかもしれないし、トラブル自体が起きなかったかもしれないよね」と伝えていた。
Q:「あの先生はこう言った、あの授業はこうだった」みたいな他の教員とのずれのような部分に対してはどのように対応されてましたか。いろんな先生が生徒と関わる為、生じやすいと思うのですが。
「あー、そうだったんだ」と言っていた。だからどうってことはしていない。逆に「先生はこうした方がいいと思うんだけど」と、自分の行動の背景を伝えていた。
Q:teachingとcoachingの違いを具体的に教えてほしいです。
- teachingは、答えを知っている人が教えること
例)「テスト勉強何時間やりなさい」
- coachingは、自分で考えて答えを見つけ、答えや仮説に対して行動し、検証してみること。
例)「テストで点数を取るためにどれくらい勉強したらいいと思う?」(テストで高い点数を取りたいと自分で望んでいることが前提。)
Q:冒頭で英語が得意じゃないとおっしゃっていたのですが、私もあまり得意な方ではありません。授業や働き方などで大事にされていたことや、アドバイスをいただけると嬉しいです。
得意なことを得意な人が教えると正直わかりにくいって感じていた。難しい言葉を使わずに置き換えていた。例えば、単に「助動詞」という言葉を伝えるのではなく、「助動詞は動詞を原型にする魔法使い」というように、イメージしやすいように伝えていた。
Q:中学生は男子と女子があまり話さなくなる印象があるのですが、関わるように工夫しておられたことはありますか?
触れられたくないのではと思っていたから特になにも。高校は放っておいても男女関係なくなる時もある。中学ならではのあるあるだなと思う。
「関わらせなければならない」ことはないかもしれませんね。
Q:授業開きではどんなことをしていますか?
初めての子たちには必ず1時間自分のことを話していた。そして、先生に聞きたいことを聞いていい時間にしていた。
「授業に入ったらこんなに話せないからね」と伝えて1時間話していた。
子どもたちのことを知りたいと思っているが、先生自身がある程度自己開示をしないと子どもたちのことを知るのは難しい。答えたくないことは答えたくないと素直に伝えていた。
→この時間をしっかり取ることで、当てないと話せない子、自分で挙手してくれる子、目を合わせないとあげない子などがわかる。そのためフリートークを大事にしていた。
Q:どんな教材でコーチングを学んでいますか?コーチングに関する読んだ方が良い本ありますか?
キャリアコンサルタントの資格は、認定講座を3ヶ月ほど、毎週受けていた。
「コーチングの基本」という本がおすすめ。
最近コーチングに関する本が増えてきたから手に取りやすいものを選ぶといい。
コーチングは、本当に多種多様な教材やプログラムがあるため、信頼できるものを探すことも大切ですね。
Q:子どもたちがよく考えてくれるような効果的な問いを投げられるようになりたいのですが、アドバイスはありますか?
最初は「わかる人、手あげて!」のスタイルだったが、みんなの前で答えることが自己肯定感を下げることに繋がると知った。
その後は、回答は紙に書いて持ってくる。みんなの前で音読することが辛い人もいるから一斉に音読してチェックしてほしい人は先生のところへ、というスタイルに変えた。
他には、教師が話す時間を少なくするようにしていた。
最後に
今回は、「中高の学級運営で大切なこと」を中心にお話をお伺いしました。生徒に目標やなりたい姿を問いかけることが、生徒たちの自主性を育てていくことにつながるのだと、とても勉強になりました。また、学級運営の子どもたちへの影響力の大きさを改めて実感しました。
ある一場面への対応を切り取っても、その裏には先生・生徒それぞれの想いや、背景があります。
今回の沢山の質問の中から、その根っこの部分も感じ取り、自分はどうしたいかな?と考えていただけると幸いです。